化粧品・日用品容器の素材選定では、内容物を保護する性能や使いやすさに加え、素材使用量の削減や資源循環への配慮も重要です。バイオマスプラスチックや再生プラスチックなど、素材の選択肢が広がっています。それぞれの特徴と部品に求められる役割を照らし合わせることが、用途に合った素材選びにつながります。
この記事では、化粧品・日用品容器のうち、プラスチック製の容器やポンプなどの部品を中心に、環境配慮素材の特徴と選び方を整理します。そのうえで、製品品質と環境負荷の低減を両立するための設計の考え方を解説します。
化粧品・日用品容器で環境対応が求められる背景

EUでは、PPWR(EU包装・包装廃棄物規則)が2026年8月12日から原則適用されています。包装のリサイクル性や、プラスチック包装における再生プラスチックの最低含有率などについては、要件ごとに適用時期が定められています。
EU市場に供給される製品の容器・包装に関わる日本企業も、該当する要件や適用時期を踏まえて、素材や設計を検討することになります。
また、容器の環境対応を考える際は、素材そのものの特徴に加え、原料の調達から製造、輸送、使用後の処理まで、製品のライフサイクル全体に目を向けることも、素材や設計を検討する手がかりになります。
国内で環境配慮材が注目される背景
日本国内では、2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法に基づく設計指針で、素材使用量の削減や、再生利用を容易にする工夫などが示されています。
こうした環境対応に加え、原料価格の変動や安定調達も、素材選定で考慮したい要素です。PP・PEの原料の一つであるナフサについても、価格動向が材料コストを検討する際の参考になります。
こうした背景から注目されているのが、環境負荷の低減や資源循環を考慮して開発・採用される「環境配慮材」です。植物由来樹脂やリサイクル材などさまざまな種類があり、それぞれ特性や適した用途は異なります。
素材ごとの特徴を把握し、用途や求められる性能と照らし合わせることで、採用に適した素材を検討しやすくなります。
代表的な環境配慮素材の種類と特徴
代表的な環境配慮素材について、採用の目的と選定時の着眼点を紹介します。
【素材・区分別の比較表】
バイオマスプラスチックは、植物などの再生可能な有機資源を原料として利用したプラスチックです。一方、生分解性プラスチックは、一定の条件下で微生物の働きによって分解される性質を持つプラスチックです。原料の由来と分解する性質は異なる分類軸であり、両方に該当する素材もあります。
| 素材・区分 | 主な検討目的 | 素材選定時の確認項目 | 設計・採用時の着眼点 |
|---|---|---|---|
| バイオマスプラスチック | 化石資源への依存低減 | 樹脂の種類、バイオマス含有率、採用グレードの物性、環境負荷の評価条件 | 現行材との物性差や成形条件を確認し、要求性能を満たすか評価する |
| 再生プラスチック | 回収した資源の再利用 | 原料の由来、再生方法、再生材含有率、物性・色・においのばらつき | 内容物への接触の有無や外観・機能の要求に応じ、採用する部品を検討する |
| 生分解性プラスチック | 特定の使用・処理条件に応じた活用 | 分解する環境・条件、使用中の耐久性、想定する回収・処理方法 | 生分解性が必要な用途か、使用後の処理方法と整合するかを確認する |
※生分解性プラスチックは、化粧品・日用品容器全般への採用を推奨するものではありません。用途と使用後の処理条件を踏まえて判断する必要があります。
環境負荷の低減効果や製品への適性は、素材名だけでは判断しきれない場合があります。
性能面では、耐熱性や成形性などが樹脂の種類やグレードによって異なります。候補となる材料の物性データを、製品に求められる性能や製造条件と照らし合わせて選定します。
環境面では、原料の調達から製造、輸送、使用後の処理まで、どの工程を評価に含めるかによって結果が変わります。CO₂排出量の削減効果を示す際も、比較対象や評価範囲を明確にすることが重要です。
バイオマスプラスチックの種類や生分解性プラスチックとの違いについては、以下の記事をご参照ください。
素材の切り替えとあわせて考えたい容器の機能と構造

化粧品・日用品容器は、内容物を入れる本体だけでなく、キャップやポンプ、シール部品など、複数の部品で構成されます。部品はそれぞれ異なる役割を担い、組み合わさって機能するため、一部の素材変更が容器全体の品質や使いやすさに影響する場合もあります。
部品ごとに求められる性能が異なる
例えば、内容物に接触する部品では内容物との相性、密封を担う部品では漏れを防ぐ性能、繰り返し動く部品では操作性や耐久性が素材選びに関わります。
こうした要求を満たすために、異なる素材を組み合わせる場合があります。素材を統一・変更する際は、部品同士のはめ合わせや動作を確認しながら、形状や寸法を調整する方法も考えられます。素材単体と組み立てた状態の両方で評価することが、用途に合った組み合わせを探る手がかりになります。
【部品の役割と確認項目の例】
| 対象部位 | 求められる役割 | 素材変更時に確認したい項目 |
|---|---|---|
| 内容物に接触する部品 | 内容物の品質を保つ | 内容物との相性、変形や膨潤、色・においへの影響 |
| 密封を担う部品 | 内容物の漏れを防ぐ | 密封性、寸法の安定性、組み付け状態 |
| 繰り返し動く部品 | 安定して操作・吐出できるようにする | 操作性、摩耗、繰り返し使用時の機能 |
| 外観を担う部品 | 製品の意匠を保つ | 色調、表面状態、加飾との相性 |
使用後の分解・分別まで考える
異なる素材が一体化し、容易に分離できない構造では、使用後の分別や再資源化が難しくなる場合があります。ただし、リサイクルの可否は素材の組み合わせだけでなく、回収・選別・再資源化の仕組みにも左右されます。
設計面では、各部品の機能を維持しながら、素材の種類を減らすことや、異なる素材の部品を分解しやすくすることが検討の方向になります。部品構成の見直しに加え、素材使用量の削減や、採用する素材に応じた設計・成形条件の調整も選択肢です。
環境対応を進める素材選定と設計のポイント

素材や構造の見直しでは、環境負荷の低減とあわせて、使いやすさや携帯性、梱包効率などの改善を図れる場合もあります。ここでは、製品に求められる品質や機能を踏まえながら、素材選定と設計で検討できる工夫を紹介します。
01 まず、目的と要求性能を整理する
環境対応の目的には、素材使用量の削減、化石資源への依存低減、再生材の活用、再資源化のしやすさの向上などがあります。これらは、それぞれ検討する方法や評価の指標が異なります。例えば、素材使用量の削減が目的なら、部品重量や製品全体の使用量を確認します。再生材の活用が目的なら、採用部位や含有率を検討します。目的を明確にしたうえで、内容物との相性、密封性、強度、操作性、供給条件など、維持すべき条件を整理します。
02 素材の種類と分解・分別のしやすさを見直す
再資源化を考慮する場合は、使用する素材の種類を減らすことや、異なる素材の部品を取り外しやすくすることが検討の方向になります。単一素材化を検討する際は、密封性や耐久性などとの両立も課題になります。素材を統一できる部品と、機能上、異なる素材が必要な部品を整理することで、想定する再資源化工程に適した構造を検討しやすくなります。
03 小型化・軽量化で素材使用量を減らす
環境対応の方法は、素材の切り替えだけではありません。部品の寸法や肉厚、部品点数を見直すことで、素材使用量を削減できる場合があります。一方、単純な薄肉化や小型化は、強度や寸法の安定性、使いやすさに影響する可能性があります。使用時や輸送時に求められる性能とのバランスを見ながら、寸法や肉厚を検討します。
小型化と必要な機能の両立を図った例として、三谷バルブの「コンパクトポンプ」があります。ワンプッシュで必要な量を吐出できることを重視しながら、ポスト投函に対応する製品づくりを目指して開発しました。サイズの見直しは、携帯性や梱包効率などにも関わります。小型化の際にどのような機能を確保し、使いやすさにつなげたのか、詳しくは以下の記事で紹介しています。
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04 素材特性に合わせて設計・成形条件を調整する
採用する素材やグレードによっては、流動性や収縮率などが現行材と異なり、従来の形状や成形条件のままでは寸法や外観が安定しない場合があります。
素材の切り替えにあたっては、物性データを比較するとともに、部品形状や寸法、成形条件の調整が必要かを検討します。原料の由来に加え、実際に採用する材料の特性を把握することが、設計や成形条件を検討する手がかりになります。
05 試作・評価で容器全体の性能を確認する
素材と構造の候補が決まったら、試作による評価へ進みます。部品単体の寸法や外観に加え、組み立てた状態での漏れや操作性、繰り返し使用時の機能などを調べます。
評価項目や条件は、内容物や保管環境、想定する使用期間などに応じて設定します。こうした評価結果を素材や設計、成形条件に反映することで、品質を確保しながら環境対応を進めやすくなります。
素材と設計を組み合わせ、用途に適した方法を選ぶ
化粧品・日用品容器の環境対応では、バイオマスプラスチックや再生プラスチックへの切り替えに加え、素材使用量の削減や、分解・分別しやすい構造への見直しなど、複数の方法があります。
素材を選ぶ際は、まず環境対応の目的と、製品に必要な品質・機能を整理することが重要です。そのうえで、採用する部品や素材の組み合わせ、成形条件を検討し、試作・評価を通じて実現性を確認します。
環境対応の方法は、製品の用途や求められる機能によってさまざまです。素材の変更に加え、部品の小型化や構造の工夫まで視野を広げることで、製品に合った取り組みを探ることができます。
三谷バルブでは、用途や製品特性に応じた環境配慮素材の活用に向けて、検討を進めています。
取り組みについては、以下の記事をご参照ください。


