PPWR(包装及び包装廃棄物規則)をはじめとする環境規制への対応が求められる中、多くの企業で「環境配慮材を採用したいが、何を選べばよいかわからない」「品質や生産性を維持できるか不安」といった課題が顕在化しています。
実際に環境配慮材を製品へ採用するためには、素材の特性だけでなく、設計や成形、生産までを見据えた検討が欠かせません。三谷バルブでは、こうした市場の変化に対応するため、様々な環境配慮素材の評価・検証を行ってきました。
本記事では、研究グループへのインタビューを通して、その取り組みや課題、そして今後の可能性についてご紹介します。
なぜ今、環境配慮素材が注目されているのか?

近年、世界的に資源循環(サーキュラーエコノミー)への移行が進んでいます。
これまでの「資源を採掘し、製品を作り、使用後に廃棄する」という一方向の経済活動から、使用済み資源を再び活用する循環型社会への転換が求められるようになりました。
こうした流れを背景に、包装容器やその構成部品にも大きな変化が訪れています。
その代表例の一つが、欧州で施行が進められているPPWR(包装及び包装廃棄物規則)です。
PPWRでは、包装廃棄物の削減だけでなく、リサイクル性の向上や再生材利用の促進などが求められており、従来の「機能性・コスト・生産性」に加え、「リサイクル性・再生材活用・資源循環への貢献」といった視点も設計段階から求められるようになっています。
そのため近年では、モノマテリアル化や再生材の活用、バイオマス素材の採用など、環境配慮を意識した素材選定への関心が高まっています。
しかし、環境に良い素材を選べば、それだけで課題が解決するわけではありません。
素材が変われば、成形条件や強度、内容物との適合性などにも影響が生じます。カタログ上の性能が優れていても、実際の製品として安定して生産できなければ、実用化は難しくなります。
だからこそ今求められているのは、「どの素材を選ぶか」だけではなく、「その素材をどのように製品として成立させるか」という視点です。
環境対応と製品性能を両立するためには、素材特性を理解し、それを活かす設計技術や成形技術が欠かせません。
では実際に、環境配慮素材の研究開発の現場ではどのような課題があり、それをどのように乗り越えているのでしょうか。
三谷バルブ研究グループへのインタビューを通して、その取り組みの舞台裏に迫ります。
参考文献:農林水産省「輸出先国における容器・包装に関する規制」
研究グループに聞く、環境配慮素材のリアル

新しい素材を自社の製品に採用する際、「本当に今の品質を保てるのか」「成形不良が起きないか」という不安を抱かれることも少なくありません。そこで今回は、最前線で素材と向き合い続ける三谷バルブの研究グループに、現場のリアルな声と試行錯誤のプロセスを聞きました。
なぜ環境配慮素材への取り組みを始めたのか
「会社としてSDGsへの取り組みを進める方針があり、その一環として研究グループでも活動を始めることになりました。」
研究グループの担当者はそう振り返ります。
SDGsは、2030年までに地球環境や社会のさまざまな課題を解決するために国連が定めた17の目標です。
その中では、資源の持続可能な管理と効率的な利用や気候変動対策が重視されており、ものづくりの現場における廃棄物の適正な処理や再利用、プラスチック資源の循環は、これらの目標達成において重要な鍵を握っています。
製造現場から発生する資材のロスや廃棄プラスチックも、適切に管理しなければ環境負荷や資源の無駄遣いに繋がる恐れがあります。
こうした背景もあり、お客様からも「環境配慮材を使用したい」「モノマテリアル化を進めたい」という切実なご相談が急速に増えていきました。
しかし、市場の変化に焦るあまり、品質の伴わない素材を選んでしまっては、本末転倒になりかねません。
三谷バルブでは、企画から製造まで手がける一貫生産体制だからこそ叶えられる、市場の変化に柔軟に対応していく設計技術を活かし、様々な次世代素材の検証・研究を本格化させました。
三谷バルブで扱う環境配慮素材
現在、三谷バルブでは実用化に向けて、様々な環境配慮素材の検討・活用を進めています。
素材ごとに特徴や課題は異なるため、用途や目的に応じた選定が重要です。
より最適な素材選びに繋がる各素材の詳しい特性やSDGsへの貢献度については、下記のカタログをご覧ください。
環境配慮材一覧(以下イメージ参照)
PDF資料 1ページ/2ページ


三谷の設計・成形技術|環境配慮材を“量産できる製品”にするために
多くの企業が環境対応への移行に悩む理由はシンプルです。
それは、従来の石油由来プラスチックと比べ、環境配慮素材はそれぞれが異なる特性(クセ)を持っている傾向が見受けられる点です。
例えば、熱に対する収縮率の違いによる成形条件のシビアさや、落下時の強度(耐衝撃性)の低下、内容物との相性、さらにはポンプ等に用いた際の吐出性能に至るまで、従来材と同じ感覚では扱えないなど、検討すべき点が多く存在します。
そのため、既存の金型にただ新しい素材を流し込むだけでは、不具合や成形不良が発生しやすくなります。
実際に三谷バルブの研究グループでも、初期の検証段階では幾度となく壁にぶつかりました。
「カタログスペックは良くても、実際にやってみたら想像以上に扱いづらい材質もあった」と担当者は振り返ります。
例えば、シェルパウダーなどの粉体を樹脂に練り込んだフィラー系(パウダー配合)素材は、環境負荷の低減には非常に有効ですが、溶かした際の樹脂の流動性が低下するという面があります。
そのため、金型の通り道(ランナー)の細部にまで綺麗に流れ込まず、製品の形が欠けてしまう(未充填)、あるいは表面の仕上がりが美しくならないといった問題に直面することもありました。
カタログ通りにはいかない、この素材ごとの特性という壁をどのように乗り越え、確かな製品として成立させるのか。
続く章では、三谷バルブの設計・成形技術の裏側に迫ります。

(欠けてしまった成形品)
三谷の設計技術|環境配慮素材を“実際に使える製品”にするために

前章で触れたフィラー系素材の流動性など、環境配慮素材特有の“作りづらさ”に対応するため、三谷バルブでは独自の成形ノウハウと、設計の工夫でこれらの課題を受け止めています。
三谷バルブの強みは、既存の金型をそのまま流用するだけではなく、新素材の特性を丁寧に解析できる点にあります。
溶けた樹脂がスムーズに流れるよう金型のランナー(通り道)を微調整したり、熱収縮率を踏まえて製品の肉厚や構造そのものを変更したりと、最適な形状を導き出していきます。
さらに、温度や圧力といった成形条件の調整や、度重なる検証・試作を通し、環境素材であっても既存品と遜色のない製品化の実現に向けて、日々開発を行っています。
今後注目している方向性
環境規制や市場のニーズは日々変化を続けています。三谷バルブでは、現在の成果にとどまることなく、さらに先の未来を見据えたものづくりを目指し、いくつかの方向性に引き続き着目しています。
具体的には、単一素材化によるリサイクル効率の最大化を目指す「モノマテリアル化」や「リサイクル性のさらなる向上」をはじめ、「バイオマス素材・再生材(PCRなど)の開発と応用」、そしてプラスチック使用量そのものを削減する「製品の軽量化」といった取り組みが挙げられます。
理想論だけで終わらせないために
環境対応は、単なる素材変更ではなく、設計・成形・品質保証まで含めた総合的な取り組みです。
三谷バルブでは、様々な環境配慮素材の評価・検証を通じて培った知見を活かし、お客様の課題や用途に応じた最適な選択肢を提案しています。
環境規制や市場要求が変化する時代だからこそ、素材だけでなく、その先の製品化まで見据えたパートナーが求められています。
私たちはこれからも、資源循環と持続可能なものづくりの実現に向け、お客様とともに最適な選択肢を考え続けていきます。
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