プラスチックは現代社会に欠かせない素材でありながら、環境への負荷が大きいことが課題となっています。そこで注目されるのがプラスチックリサイクルです。リサイクルを通じて、廃プラスチックはさまざまな形で再利用され、持続可能な社会づくりに貢献できます。
プラスチックリサイクルの基礎知識から、リサイクルの種類(マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル)を詳しく解説していきます。プラスチックリサイクルの現状を理解し、環境に配慮した行動を始めるための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
プラスチックリサイクルの基礎知識
プラスチックリサイクルとは、使用済みのプラスチック製品を回収し、再資源化して新たな製品や原料として利用することを指します。リサイクルされたプラスチックは、衣料品や容器、公園の遊具、ベンチなどの製品に生まれ変わります。また、化学製品の原料として再利用されることもあります。
リサイクルできるプラスチック
プラスチック製品の中には、リサイクルできるものとできないものがあります。リサイクル可能なプラスチックは、主にプラマークやPETマークが付いている製品です。これらのマークは、飲料や調味料のペットボトル、ポリ袋、お弁当の容器、食品用トレイなどに表示されています。なお、ペットボトルは多くの場合、ボトルとキャップの両方がリサイクル可能です。
ただし、薄いラップフィルムや3cm以下の小さなプラスチック製品はリサイクルできません。これらの製品は、リサイクル施設の機械に巻き付いたり挟まったりして故障の原因となるため、リサイクルの対象外となっています。
日本のプラスチックのリサイクル率
出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会|2022年廃プラスチック総排出量は823万t、有効利用率は87% 「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(マテリアルフロー図)」を公表
一般社団法人プラスチック循環利用協会の調査結果によると、2022年の廃プラスチック総排出量は823万トンで、そのうちの87%にあたる717万トンがリサイクルされています。この数字だけを見ると、日本のプラスチックリサイクル率は非常に高いように感じられます。
しかし、日本のプラスチックリサイクル率の内訳を見ると、以下のような偏りがあることがわかります。
日本のプラスチックリサイクル率の内訳(2022年)
注目すべき点は、世界的にはサーマルリサイクルをリサイクルとしてみなしていないことです。そのため、国際的な基準で評価すると、日本の廃棄物のリサイクル率は世界ランキングでは下位に位置することになります。
参考:国立環境研究所|なぜ日本のごみのリサイクル率はヨーロッパに比べて低いのか?
プラスチックリサイクルの現状と課題
日本のプラスチックリサイクルの現状を見てみると、リサイクル率は世界水準と比較するととても低いと言えます。特に、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの割合が低く、サーマルリサイクルに大きく依存している点が課題です。
また、2021年から始まった廃プラスチックの輸出規制により、国内での資源循環の確立が急務となっています。これまで日本は廃プラスチックを海外に輸出していましたが、今後は国内でのリサイクル体制の強化が求められています。
プラスチックのリサイクル方法には、主に以下の3種類があります。
・マテリアルリサイクル
・ケミカルリサイクル
・サーマルリサイクル
以降では、それぞれの特徴やメリット、デメリットについて解説します。プラスチックの再利用がどのように行われているか、理解が深まるでしょう。
マテリアルリサイクルとは
マテリアルリサイクルは、使用済みのプラスチックを原材料として再び新しいプラスチック製品を作り出す方法です。回収されたプラスチックは、分別・洗浄された後、粉砕や加工を経て新たな製品の原料となります。例えば、使用済みのペットボトルから新しいペットボトルや衣類、食品用トレイなどが作られます。
ケミカルリサイクルとは
ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学的に処理して分解し、新たな原料として再利用する方法です。高温で熱処理して分解された廃プラスチックは、油やガス、コークスなどの原料に生まれ変わります。さらに、分子レベルまで分解して再びプラスチック製品やナイロン素材などの原料にすることも可能です。
サーマルリサイクルとは
サーマルリサイクルは、廃プラスチックを燃焼させて発生する熱エネルギーを回収し、発電や施設の暖房、温水供給などに利用する方法です。
主に、他のリサイクル方法で処理が困難な廃プラスチックが対象となります。近年では、ごみ発電としての活用が注目されており、プラスチックの高い発熱量を活かした効率的なエネルギー回収が行われています。
サーマルリサイクルは、他の方法でリサイクルが困難な廃プラスチックを処理できる点が大きなメリットです。また、分別コストの軽減や埋立地の節約にも貢献します。しかし、焼却に伴う環境負荷や、原材料として再利用ができない点が課題となっています。
なお、国際的にはサーマルリサイクルをリサイクルとして認めていない場合が多く、日本のリサイクル率の評価に影響を与えています。
プラスチック資源を循環するための取り組みとして、ミタニが開発したリサイクル技術です。
今回は、ミクスチャーサイクルについてご紹介します。
プラスチックリサイクルに取り組むメリット
企業がプラスチックリサイクルに取り組むことは、環境保護に貢献するだけでなく、ビジネス面でもさまざまなメリットをもたらします。
以下では、プラスチックリサイクルへの取り組みが企業にもたらす主な利点について解説します。
企業イメージの向上
プラスチックリサイクルへの積極的な取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たすための重要な活動としても認識されています。この取り組みにより、環境問題に対する企業の姿勢が明確に示され、消費者や取引先からの信頼度が高まります。
環境意識の高い消費者が増加する中、プラスチックリサイクルに取り組む企業は、持続可能な社会の実現に貢献する企業として評価されます。こうした評価は、ブランド価値の向上につながり、競合他社との差別化を図ることができます。さらに、環境に配慮した製品やサービスへの需要が高まる中、新たな顧客層の獲得や既存顧客との関係強化も期待できます。
また、プラスチックリサイクルへの取り組みは、従業員満足度の向上にも寄与します。環境保護に貢献する企業で働くことへの誇りや、社会的意義のある仕事に携わっているという実感が、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保・定着につながります。
ESG投資への期待
プラスチックリサイクルへの取り組みは、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からも高く評価されます。ESG投資は、企業の財務面だけでなく、環境保護や社会貢献、企業統治の面も考慮して行われる投資手法です。
プラスチックリサイクルは、「環境(E)」の要素として特に重要視されています。資源の有効活用や廃棄物削減、CO2排出量の低減など、環境負荷の軽減に直接的に貢献するからです。こうした取り組みは、ESG評価機関や投資家から高い評価を受け、企業の株価や価値向上につながる可能性があります。
さらに、ESG要素に配慮した経営は、中長期的な企業の成長と持続可能性を高めると考えられています。プラスチックリサイクルへの取り組みは、資源の効率的な利用や廃棄物処理コストの削減といった経済的メリットも生み出すため、企業の財務パフォーマンスの改善にも寄与します。
このように、プラスチックリサイクルへの取り組みは、ESG投資を呼び込む重要な要素にもなり、資金調達の面でも企業に有利に働く可能性があります。持続可能な経営を目指す企業にとって、プラスチックリサイクルは重要なテーマであり、積極的な取り組みが求められています。
環境に優しいプラスチック製品とは
これまで見てきたように、日本のプラスチックリサイクルにはまだ多くの課題があります。特に、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの比率が低く、サーマルリサイクルに大きく依存している点や、2021年から始まった廃プラスチックの輸出規制への対応が急務となっていることなどが挙げられます。これらの課題を解決するためには、国や企業、そして私たち一人一人が積極的に行動を起こす必要があります。
環境に配慮しながらプラスチックを利用するには、適切なリサイクルを心がけることはもちろんですが、そもそも環境に優しいプラスチック製品を選ぶことも非常に重要です。環境負荷の少ない原料を使用しているものや、リサイクルしやすい設計がされているプラスチック製品を選ぶこと、環境への影響を軽減することができます。
こうした中、三谷バルブでは環境に配慮した新しいタイプのプラスチックの開発に取り組んでいます。この環境配慮型プラスチックは、従来のプラスチック製品と比べて環境負荷が低く、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。
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