プラスチックは、現代社会に欠かせない素材として広く受け入れられていますが、その原料や製造方法について詳しく知る機会は多くありません。
プラスチックの製造方法を知ることは、環境問題への意識を高め、プラスチックとの付き合い方を見直すきっかけとなります。本記事では、プラスチックの原料や製造方法について、わかりやすく解説します。
プラスチックは何からできている
プラスチックは石油から作られています。石油を精製してできた「ナフサ」という液体を原料に、「ペレット」と呼ばれるプラスチックの粒を製造し、そのペレットを加工することでプラスチック製品が作られているのです。
つまり、私たちが日常的に使っているプラスチック製品は、原油という形で地下から掘り出された石油を出発点としており、石油精製工場や石油化学工場での加工を経て、最終的な形になっているわけです。
プラスチックという素材は石油抜きには語れないといっても過言ではありません。
プラスチックは何からできている
プラスチック製品ができるまでには、いくつかの工程があります。
原油の輸入から最終製品ができるまでの流れを追ってみましょう。
プラスチックの製造工程
- 外国から原油を輸入
- 石油精製工場でナフサを製造
- ナフサを加工してペレットを製造
- ペレットからプラスチック製品を製造
①外国から原油を輸入
日本で消費されるプラスチックの原料となる原油は、ほとんどが外国からの輸入品です。原油は地下から掘り出された状態のもので、輸入量の99.7%を占めており、その8割は中東地域から運ばれてきます。
サウジアラビアやアラブ首長国連邦、クウェート、カタールといった国々から大量のタンカーで運ばれた原油は、日本に到着後、石油精製工場に運び込まれます。
日本は資源の乏しい国ですが、海外から輸入した原油を国内で精製・加工することで、私たちの生活を支えているのです。
②石油精製工場でナフサを製造
石油精製工場に運ばれた原油は、「蒸留塔」と呼ばれる設備で加熱されます。原油は、石油ガス、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料、灯油、軽油、重油、アスファルトの混合物です。
これらの成分は沸点が異なるため、蒸留塔の中で温度差を利用して分離することができます。
例えば、ガソリンやナフサの沸点は30〜180℃、灯油の沸点は170〜250℃です。このように、沸点の違いを利用して、原油からそれぞれの成分を取り出していくのです。
出典:石油化学工業協会|石油化学コンビナートを探る(①石油精製工場)
こうして分離された成分のうち、ナフサはプラスチックの原料となります。ナフサは国内の石油精製工場で製造されるだけでなく、約7割は外国からも輸入されています。
③ナフサを加工してペレットを製造
石油精製工場で製造されたナフサは、パイプラインを通って石油化学工場に運ばれます。石油化学工場では、ナフサを高温で分解します。この過程で、ナフサからエチレンやプロピレン、ブタジエン、ベンゼンなどの「石油化学基礎製品」と呼ばれる分子が取り出されます。
石油化学基礎製品
- エチレン
- プロピレン
- ブタジエン
- ベンゼン
- トルエン
- キシレン
これらの分子は、プラスチックの原料となる重要な材料です。
例えば、エチレンからは「ポリエチレン」、プロピレンからは「ポリプロピレン」といったプラスチック原料が作られます。これらのプラスチック原料をさらに加工し、溶かして冷却することで、「ペレット」と呼ばれる粒状のプラスチック中間原料が完成します。
④ペレットからプラスチック製品を製造
石油化学工場で製造されたペレットは、プラスチック加工工場に運ばれます。プラスチック加工工場では、ペレットを再び加熱して溶かし、型に流し込んで冷却することで、私たちが日常的に目にするプラスチック製品を成形します。
代表的な成形方法は、「射出成形」と呼ばれるもので、溶けたプラスチックを金型に高圧で流し込み、冷却して固めるという工程です。この方法で作られるのは、家電製品や自動車の部品、日用品、食品包装など、実にさまざまなプラスチック製品です。
こうして、石油という原料から始まった長い工程を経て、私たちの身の回りにあるプラスチック製品が生み出されているのです。
プラスチックの課題
プラスチックは石油を原料としており、石油精製工程で分離されたナフサという液体を加工してペレットにし、そのペレットを原料にしてプラスチック製品が作られています。
プラスチック製品の製造工程は、原油の輸入から始まり、石油精製、ナフサの分解、ペレットの製造、そして製品の成形へと続きます。この一連の流れを理解することで、私たちの身の回りにあるプラスチック製品が、どのようにして作られているのかがよくわかります。
石油という貴重な資源を無駄なく活用し、プラスチックというすぐれた素材を生み出す技術は、まさに現代社会を支える重要な基盤といえるでしょう。
しかし、プラスチックの原料である石油資源は有限であるため、不要なプラスチックを使用することは資源の枯渇につながります。 クジラやウミガメ、海鳥、魚の体内からプラスチックが出てきているという報告があり、生態系を含めた海洋環境への影響が懸念されています。
持続可能な社会の実現に向けて、環境に優しいプラスチックの開発が急務となっています。バイオプラスチックをはじめとする eco-friendly なプラスチック素材について、以下の関連記事で詳しく解説しています。
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