プラスチックは、私たちの身の回りのあらゆる製品の材料として使われています。しかし、最近では、海洋プラスチックごみ問題や、製品ライフサイクルにおけるCO2(二酸化炭素)排出などが問題視されており、今まで以上に環境への配慮が求められるようになりました。そんな中で、プラスチックからのCO2排出を大幅に削減できる次世代技術「グリーンナノ」が注目されています。
グリーンナノとは?
グリーンナノは、プラスチックにごくわずかな量を添加するだけで、焼却時のCO2排出量を大幅に削減できる機能性マスターバッチです。東京理科大学の阿部正彦教授・東京理科大学発ベンチャーのアクテイブ株式会社が開発した日本発の次世代技術であり、プラスチックによる環境負荷の低減に役立つと注目されています。
現在の日本では、廃棄されたプラスチックを処理する方法は大きく3つに分かれています。
1.マテリアルリサイクル
使用済みのプラスチックをそのまま原料にして、新しい製品を作る
2.ケミカルリサイクル
使用済みのプラスチックを化学的に分解して石油原料やモノマーまで戻し、新品と同等のプラスチック原料にする
3.サーマルリサイクル
使用済みのプラスチックを焼却して熱エネルギーとして回収し、暖房や給湯に利用する
一般社団法人プラスチック循環利用協会が公表している「プラスチックリサイクルの基礎知識 2021」によると、2019年時点での日本の廃棄プラスチック有効利用率は85%であり、そのうちの60%はサーマルリサイクルによって処理されています。しかし、リサイクルされているとはいえ、プラスチックの焼却時にCO2が排出されるので、環境に与える負荷が少なくないのが現状です。このプラスチック焼却時のCO2排出は、日本が脱炭素化を進める上での大きな課題ですが、グリーンナノが解決策の一つになると期待されています。
グリーンナノでCO2排出量が削減できる仕組み
グリーンナノ技術は、普段使っているプラスチックに対して3%のグリーンナノを添加するだけで効果を発揮します。
グリーンナノを添加したプラスチックには、ナノべシクルカプセルという数10nm〜数100nmのカプセルが含まれるようになります。ナノべシクルカプセルはリン脂質という物質でできた膜を持っており、内部にさまざまな材質を封入できます。グリーンナノで使われるナノべシクルカプセルには炭化促進剤が封入されており、それがプラスチック焼却時のCO2削減に貢献します。
一般的なプラスチック製品は、焼却すると可燃性ガスが発生します。そして、その中には炭素が含まれており、空気中の酸素と結合することでCO2になります。これがプラスチックの焼却でCO2が発生する原理です。
しかし、グリーンナノでは、ナノべシクルカプセルに封入された炭化促進剤が、焼却時に発生した可燃性ガス内に含まれる炭素を灰などの炭化物に固定します。その結果、炭素と酸素の結合が抑えられることになり、CO2排出量が削減できるのです。
グリーンナノによるCO2排出量の削減効果は製品によって異なりますが、一般的に60%ほどの削減率が見込めます。また、添加量が少量なのでもともとのプラスチックの物性にほとんど影響を与えないこと、条件を変えることなく従来通りの工法で製品を作れること、といったメリットがあります。
グリーンナノの実用化例
グリーンナノはすでに、シート・トレイ・バッグ・フィルム・シール・ボトル・ハンガーといったさまざまなプラスチック製品に使用されています。また、服飾製品への熱転写プリントに応用されるなど、新たな用途も広がっています。
手間やイニシャルコストがほとんどかからず、既存の製品を環境配慮型の製品に生まれ変わらせることができるので、多くの企業がグリーンナノの導入に取り組み始めている状況です。
グリーンナノが使われた一部の製品には、GCマークが記載されます。GCマークを見れば環境に配慮した製品であることが分かるので、消費者も製品の購入を通じて環境負荷の低減に貢献することが可能です。今後GCマークが付いた製品が増えていくかもしれないので、ご興味のある方はパッケージを見てみてはいかがでしょうか。
ミタニとグリーンナノについて
私たちミタニが作っているエアゾールバルブやディスペンサーポンプでは、主原料としてプラスチックを使用しています。ミタニでは、私たちの作った製品から排出されるCO2を少しでも削減したいと考え、グリーンナノの導入に向けた評価を進めてきました。
現時点では量産までは至っていませんが、製品の機能性が問題ないことが確認でき、グリーンナノの供給が安定するようであれば、積極的に量産化に取り組んでいきたいと考えています。グリーンナノの量産化に向けた共同開発や技術提携も受け付けておりますので、ご興味がある方はお気軽にご相談ください。