CO2排出削減は、地球環境の保護や持続可能な社会の実現に向けた重要な課題です。特に企業には、CO2削減の取り組みが求められ、社会的な責任を果たすだけでなく、企業価値の向上やコスト削減にもつながる可能性があります。本記事では、日本のCO2削減の現状と企業の役割、効果的な削減対策について解説します。また、製造業やサービス業、小売業など業種別の成功事例や、日本で利用できる支援制度も紹介しますので、貴社のCO2削減の参考にしてください。
日本のCO2削減の現状と企業の責任
地球温暖化対策において、日本の企業が果たす役割は極めて重要です。国際社会との協調の中で、日本は具体的な削減目標を掲げ、その達成に向けて取り組んでいます。特に産業部門や業務その他部門での排出量削減が課題となっており、企業の積極的な行動が求められています。CO2削減は企業にとって単なる社会的責任ではなく、競争力強化や持続可能な成長につながる機会でもあります。
ここでは、日本のCO2排出の現状と国際的な動向、そして企業がCO2削減に取り組むことで得られるメリットについて解説します。
日本のCO2排出量と国際的な動向
日本の温室効果ガス排出量は、2022年度において10億3,700万トンに達しました。これは前年度比2.5%減、2013年度比では21.3%減となっています。この削減傾向は、パリ協定に基づく日本の国が決定する貢献(NDC)で掲げた「2030年度に2013年度比46%削減」という目標に向けた進展を示しています。
しかしながら、国際的な観点から見ると、日本の削減ペースはまだ十分とは言えません。例えば、EUは2030年までに1990年比で少なくとも55%削減する目標を掲げており、より積極的な取り組みを進めています。日本も今後さらなる削減努力が求められており、特に産業部門や業務その他部門での取り組み強化が重要となっています。
参考:環境省|2022 年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)
CO2削減が企業にもたらすメリット
企業がCO2削減に取り組むことで得られるメリットは多岐にわたります。どんなメリットがあるのか学んでいきましょう。
コスト削減効果
エネルギー効率の向上や廃棄物削減によるコスト削減効果が挙げられます。例えば、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用により、長期的には電力コストを大幅に削減できます。
ブランドイメージの改善
環境配慮企業としての認知度が向上し、ブランドイメージの改善につながるでしょう。消費者の環境意識が高まる中、エコフレンドリーな企業としての評価は、新たな顧客獲得や市場シェア拡大の機会となります。
従業員のエンゲージメント向上も期待できます。共通の環境目標に向けて取り組むことで、従業員の仕事への誇りや満足度が高まり、優秀な人材の獲得や定着率の向上にもつながります。
投資家からの評価向上
ESG投資における重要な評価指標として、投資家からの評価向上が挙げられます。CO2削減への積極的な取り組みは、企業の持続可能性を示す重要な要素となり、資金調達や企業価値向上に寄与します。
CO2排出量取引制度の概要と企業への影響
CO2排出量取引制度は、企業ごとにCO2排出量の上限(キャップ)を設定し、その排出枠の過不足を企業間で取引できる仕組みです。この制度は、経済的インセンティブを活用してCO2排出量の削減を促進することを目的としています。日本では現在、国全体での制度導入はありませんが、2026年度の本格稼働に向けて準備が進められています。
一方で、東京都や埼玉県では独自の排出量取引制度が既に導入されており、一定の成果を上げています。例えば、東京都の制度では、2010年の導入以来、対象事業所の排出量が大幅に削減されています。
企業は、この制度に備えてCO2排出量の正確な把握と削減戦略の策定が求められます。排出枠を超過する企業は、他社から排出枠を購入するか、自社でCO2削減に取り組む必要があります。逆に、排出枠に余裕がある企業は、その余剰分を売却して収益を得ることができます。
CO2削減目標達成に向けた企業の課題と展望
企業がCO2削減に取り組む上での主な課題には、初期投資の負担、技術的な制約、社内の意識改革などがあります。特に中小企業にとっては、資金や人材の不足が大きな障壁となっています。これらの課題に対しては、政府の支援制度の活用や、大企業とのパートナーシップ、業界団体を通じた情報共有などが有効なアプローチとなります。
将来的には、水素技術やカーボンリサイクルなどの革新的技術の実用化が期待されています。
例えば、グリーン水素の製造や利用技術の発展は、CO2を排出しないエネルギー源として注目されています。また、デジタル技術を活用したエネルギー管理システムの普及も、企業のCO2削減に大きく貢献すると考えられています。
企業は、これらの新技術や制度の動向を注視しながら、長期的な視点でCO2削減戦略を策定し、実行していくことが求められます。同時に、サプライチェーン全体でのCO2削減にも取り組むことで、より効果的な削減を実現できる可能性があります。
CO2削減を支援する日本の制度と活用方法
日本政府は、企業のCO2削減を後押しするためにさまざまな支援制度を整備しています。その一つが助成金・補助金制度です。例えば、省エネ設備への更新を促進するため、高効率な設備の導入を支援する補助金があります。これらの制度を活用することで、企業は初期投資の負担を軽減しつつ、CO2排出量の削減に取り組むことができます。
また、税制優遇措置も重要な支援策の一つです。環境性能の高い設備投資に対して特別償却や税額控除を認める制度があり、企業の環境対策を財政面から支援しています。
さらに、日本では「地球温暖化対策のための税」という形でカーボンプライシング制度が導入されています。この制度は、CO2排出量に応じて課税することで、企業に排出削減のインセンティブを与えています。現在の税率は諸外国と比べると低めですが、今後の強化が検討されており、企業はこの動向を注視しながら対策を進める必要があります。これらの制度を効果的に活用することで、企業はCO2削減の取り組みを加速させることができるでしょう。
三谷バルブでもCO2削減を推進
三谷バルブでは、自然環境に配慮し、持続可能な社会を実現するために、各工場でさまざまな取り組みを行っています。具体的な事例として、太陽光発電システムを導入することでCO2の排出量削減に取り組んでいる白河工場と滋賀工場を紹介します。Sustainableのコーナーでは、その他取り組んでいる事例なども紹介しています。
白河工場の取り組み
福島県に位置するミタニの白河工場では、日用品に欠かせないシャンプーやハンドソープのポンプを主力製品として製造しています。同工場には組立機械が100台ほど稼働しており、1日で160万個ものポンプを送り出す生産力を誇ります。
環境への配慮も積極的に進めており、2022年2月には大規模な太陽光発電システムを導入。工場の屋根には1,686枚のソーラーパネルが並び、最大出力は450kWで、年間発電量は578,766 kWh/年です。この優れた発電能力と蓄電システムにより、工場全体の年間電力使用量の14%程度をまかなうことに成功しています。
この環境配慮型のエネルギー活用により、年間のCO2削減量は260トンに達する見込みです。これは、スギの木1万8,600本分のCO2吸収量に匹敵する規模です。さらに、事務所入口に設置されたモニターで発電量や電力消費量をリアルタイムで確認できるシステムを採用しており、従業員の環境意識向上にも一役買っています。
滋賀工場の取り組み
比較的新しい製造拠点である滋賀工場は、2020年5月の操業開始以来、エアゾールバルブをはじめ、ボタンや外装品の生産を手がけています。最新設備を備えた同工場では、高い生産能力を誇り、バルブを1日20万本、外装品においては100万個もの製品を生み出しています。また、先進的な無人・省人化システムを導入し、効率的な製造ラインを実現しています。
環境保全への意識も高く、2022年3月からは太陽光発電システムの運用を開始。工場の屋根には315Wの最大出力を持つソーラーパネル379枚を配置し、年間発電量は138,708kWhに達すると予測されています。
さらに、環境負荷の低減に向けた取り組みは多岐にわたります。例えば、使用する段ボールは古紙含有率の高い素材への切り替えを進め、製品の梱包に使用する袋も、より少ない樹脂量で済む材質を採用するなど、さまざまな角度から環境に配慮した施策を展開しています。