スプレー缶は便利なアイテムですが、突然噴射できなくなると困ってしまいますよね。実は「スプレー缶が出ない」という問題には、いくつかの原因と解決方法があるのです。ヘアスプレーや防水スプレーなど、種類によっても対処法が異なります。この記事では、スプレー缶が出なくなる原因と簡単な治し方をご紹介します。正しいメンテナンス方法を知れば、スプレー缶を最後まで無駄なく使い切ることができるでしょう。
スプレー缶が出ない際に考えられる原因

スプレー缶が押しても出ない原因はいくつか考えられます。どんな症状が出ているかを確認すれば、効果的な対処法を選ぶことができます。代表的な症状と原因を見てみましょう。
樹脂の固着
主な症状:ノズルから全く出ない、出始めがかすれる、噴射パターンが不均一
判別方法:ノズル周辺に白い粉や固形物がある、キャップ内側に残留物がある、噴射口が詰まっている感触
ヘアスプレーなどに含まれるセット成分(樹脂)が、使った後にノズルの穴に残って固まることがあります。特にキャップをせずに放置すると、中の樹脂が乾いて固まりやすくなります。
夏の暑い時期は乾燥が早いので、より詰まりやすいです。その為、使った後はノズルをティッシュで軽く拭くか、必ずキャップをしっかり閉めておくことが大切です。
ガス抜け
主な症状:ボタンを押しても反応が弱い、中身はあるが出ない、押した感触が軽い
判別方法:振ると内容物の音がする、重量があるのに噴射されない、ボタンの押し心地が軽い
スプレー缶の中には「噴射剤」というガスが入っていて、これが中身を押し出す力になっています。缶に小さな傷があったり、缶のフタの部分がうまく閉まっていなかったりすると、このガスだけが逃げてしまうことがあります。
こうなると、振ると中の液体が「チャプチャプ」と音はするのに、ボタンを押しても出てこなくなります。また、ボタンを中途半端に押すだけの使い方を繰り返すと、ガスだけが先に出てしまいます。ボタンは必ず最後までしっかり押すようにしましょう。
缶の破損
主な症状:明らかな変形や凹み、ガス漏れの音や臭い噴射力の急激な低下
判別方法:缶の外観に変形や凹みがある、接合部からの液漏れ、保管場所に臭いが広がる
スプレー缶を落としたり強く押したりして変形すると、中の仕組みが壊れて使えなくなることがあります。特に「ステム」や「ガスケット」という部品(ボタンの下にある部分)が壊れると、ガスが漏れ出してしまい、スプレーの力が弱くなります。
缶のつなぎ目から液が漏れていたり、置いてある場所が妙に臭ったりする場合は、缶が破損している可能性があります。このような缶は使わずに、正しい方法で捨てましょう。
製品不備
主な症状:新品から機能しない、説明書通りに使用しても動作しない
判別方法:開封直後から問題がある、表示された使用方法を正確に守っている、同じ製品の別のものは正常に機能する
まれに、作られた時点で問題がある商品もあります。新品なのに正しく使っても動かない場合や、同じ商品の別のものは問題なく使える場合は、その商品自体に不良がある可能性があります。
こんな時は、買ったお店やメーカーに相談してみましょう。お店やメーカーによって対応が違いますが、場合によっては交換や返金に応じてもらえるでしょう。
経年劣化
主な症状:長期保管後の機能低下、内容物の変質、部品の摩耗
判別方法:製造から長期間経過している、保管環境が悪かった、少しずつ性能が落ちてきた
スプレー缶を長い間使わずに置いておくと、中の部品(ゴム部分やバネなど)が古くなって動きが悪くなります。特に暑くて湿気の多い場所では劣化が早まり、ゴム部分が硬くなったり形が変わったりして、スプレーが出なくなります。
また、長く置いておくと中身自体が変質したり分離したりして、ノズルの穴を詰まらせることもあります。スプレー缶は作られてから1~2年以内に使い切るのがおすすめです。その為、古いスプレー缶が出てきたら、新しいものを買った方が安心です。
押しても出ないスプレー缶の治し方
スプレー缶が出なくなっても、すぐに捨てる必要はありません。多くの場合、家にあるもので簡単に直せます。ここでは、よく効く方法を紹介するので、順番に試してみてください。
噴射ボタンをお湯に浸す・掃除する
スプレーが詰まる一番の原因は、ボタン(ノズル)の穴に中身が固まることです。これを直すには、お湯を使った方法が効果的です。
- スプレー缶からボタン部分を取り外す(ボタンの下のつまみに指をかけて上に引くだけ)
- 40℃くらいのお湯(熱すぎない程度)にボタンを3~15分ほど浸ける
- 固まっていた成分が柔らかくなるので、綿棒や濡れタオルでやさしく拭き取る
- 水気をしっかり拭き取ってから、もとの缶に取り付ける
針や爪楊枝で穴を掃除するのも効果的ですが、強く突くと穴が広がって壊れることがあるので、優しく行いましょう。
替えの噴射ボタンを使用する
お湯で洗っても直らない場合は、使い終わった別のスプレー缶のボタンを使うという裏技があります。同じメーカーの同じ種類のスプレーなら、ボタンが互換性を持っていることが多いです。
- 使い終わった別のスプレー缶からボタンを取る
- 詰まっているスプレー缶に新しいボタンを付ける
- ボタンを5回ほど強く押して、内部の水分を除く
- 通常通り使用する
この方法は特にヘアスプレーなど、樹脂成分が多い製品で効果的です。手元に同じ種類のスプレー缶があれば、試してみましょう。
逆さ吹きをする
スプレー缶の噴射経路内に残った内容物を排出する「空吹き(逆さ吹き)」は、詰まり予防に効果的です。
- スプレー缶を逆さまにする(ボタンが下向き)
- その状態で約3秒間ボタンを押す
- 最初は中身が出て、そのあとガスだけが出るようになる
この「空吹き」をすると、パイプの中に残った中身が全部出てきて、次に使うときもキレイな状態で始められます。空吹きをせずに置いておくと、残った中身が固まって詰まりの原因になります。使ったあとや保管する前に、この習慣を身につけると長く使えます。
【種類別】スプレー缶の目詰まり解消方法

スプレー缶の中身によって詰まる原因や直し方が違います。よく使われるスプレーの種類ごとに、効果的な直し方を紹介します。自分が使っているスプレーの種類に合った方法で対処すれば、最後まで無駄なく使えます。
種類別の目詰まり解消方法を詳しく紹介します。
ヘアスプレー
ヘアスプレーは、セット力を出すための樹脂成分を多く含んでいるため、この樹脂がノズルに付着して固まると噴射不良を起こしやすくなります。特にケープなどのハードタイプは、強力な樹脂成分が含まれているため詰まりやすい傾向があるでしょう。
ヘアスプレーのノズル詰まりを解消するには、ボタン部分を取り外し、お湯(40℃程度)で洗浄する方法が効果的です。洗浄後は水気をしっかりふき取り、本体に再装着して5回以上強くプッシュすることで内部の水を除去します。
ボタンを押す際は必ず最後まで強く押し切ることが重要で、押す力が弱いと溶けた固まりを押し出しにくくなるため注意しましょう。
防水スプレー
防水スプレーには主にフッ素系とシリコン系の2種類があり、いずれも成分が噴射口で固まりやすい特性があります。特にしばらく使用していないと、ノズル部分でフッ素やシリコンが乾燥して皮膜を形成し、使えなくなることがあるでしょう。
防水スプレーの詰まりを解消するには、ノズル部分を除光液やシンナーで洗浄する方法が効果的です。爪楊枝に除光液をつけてノズル部分の掃除をすると、固まった成分が溶けることがあります。
また、防水スプレーは定期的に使用すること、使わないときは容器を逆さまにして保存することで詰まりを予防できます。
化粧水スプレー
化粧水スプレーは、LPG、DME、窒素ガスなど様々な噴射剤が使われており、製品によって特性が異なります。噴射剤の種類によって立てて使うべきか逆さにして使うべきかも変わってくるため、パッケージの使用方法をよく確認することが大切です。
化粧水スプレーが霧状にならず直線状に出る場合は、スプレーの粘度が高すぎるか、プッシュする力が弱い可能性があります。力を入れて勢いよくプッシュすることで改善することがあります。
また、とろみのある液体はスプレーに向かないため、水のように粘度の低い化粧水を選ぶことも解決策となるでしょう。
霧吹き
スプレー缶ではありませんが、手動の霧吹きも同様に詰まることがあります。特に重い成分(亜鉛末など)を含む液体を入れると、これらが沈殿して噴射経路を塞ぐことがあります。
霧吹きの詰まりを解消するには、ノズル部分を取り外して40℃程度のお湯で洗浄し、水気をふき取ってから再度取り付けます。
また、定期的にタンク内を洗浄することで詰まりを予防できるでしょう。霧吹きを使う際は使用前によく振り、内容物を均一にすることも重要です。
スプレー缶が出なくなる誤った使用方法
スプレー缶が出なくなる原因の多くは、実は誤った使用方法にあります。以下に、避けるべき使用方法をご紹介しますので、スプレー缶を長持ちさせるために参考にしてください。
立てて使用する製品を斜めに使用
スプレー缶の中には、立てて使用するように設計されているものがあります。これらの製品には内部にディップチューブという管が設置されており、缶の底から内容物を吸い上げる構造になっています。このタイプのスプレーを斜めに使用すると、チューブが内容物に届かず、ガスだけが噴出してしまうことがあります。
製品によって使用角度の指定が異なるため、パッケージに記載されている使用方法や、缶に印刷されている表示マークを確認することが大切です。
噴射ボタンを最後まで押し切らずに使用
スプレー缶のボタンを中途半端に押すと、内容物よりもガスが先に出てしまい、結果的にガスだけが抜けてしまうことがあります。特に連続して短く押す使い方は、ガス抜けを起こしやすいので注意が必要です。
ボタンは常に最後まで強く押し切るようにしましょう。これにより、内容物とガスがバランスよく噴出し、スプレー缶を最後まで使い切ることができます。また、噴射後はノズル内に残った内容物が固まらないよう、ティッシュなどで噴射口を拭き取る習慣をつけるとよいでしょう。
振る必要があるスプレー缶を振らずに使用
顔料や亜鉛末など重い成分を含むスプレー(塗料スプレーなど)は、時間が経つと内容物が沈殿します。このようなスプレーは使用前に十分に振って内容物を均一にする必要があります。
振らずに使用すると、沈殿した成分がディップチューブを詰まらせたり、噴出後の仕上がりにムラができたりするでしょう。
その為、使用前にはキャップを装着したまま容器本体を持って上下によく振ります。また、使用中もときどき容器を振ることで、内容物の均一性を保つことができます。
関連記事:スプレー缶の使い方完全ガイド:倒立使用や振る・振らないの違いを徹底解説!
キャップをせずに保管
使用後にキャップをせずに保管すると、ノズル部分の内容物が乾燥して固まり、次回使用時に噴射できなくなることがあります。特に夏場など乾燥が早い環境では、この現象がより起きやすくなるでしょう。
使用後は必ずノズル部分をティッシュなどで拭き取り、キャップをしっかり閉めて保管します。キャップは単なる装飾ではなく、ノズルを保護し内容物の乾燥を防ぐ重要な役割を果たしているのです。正しくキャップを閉めることで、スプレー缶の寿命を延ばすことができます。
倒した状態で保管
スプレー缶を横向きや逆さまにして保管すると、内容物がノズル部分に漏れ出し、固まってしまうことがあります。また、長期間横向きに保管していると、バルブが内容物に浸かった状態になり、溶剤によってバルブが劣化する恐れもあるでしょう。
スプレー缶は必ずキャップを上にして立てた状態で保管してください。また、直射日光の当たる場所や高温多湿の環境を避け、風通しの良い常温の場所で保管することをお勧めします。適切な保管方法を守ることで、スプレー缶の性能を長く維持することができます。
中身が残っているスプレー缶の捨て方

使用できなくなったスプレー缶を処分する際には、安全面と環境面に配慮する必要があります。特に中身が残っている場合は、そのまま捨てると火災や爆発の危険があるため注意が必要です。
スプレー缶を廃棄する基本的な手順は、まず火気のない風通しの良い屋外で缶内のガスを完全に抜くことです。ガスの噴射音(シューという音)が完全になくなるまで使い切りましょう。それでも内容物が残っている場合は、自治体指定の専用穴あけ器具を使って穴を開けるか、自治体の有害ごみ収集に出す方法があります。
ただし、自治体によってスプレー缶の分別区分や処理方法は異なります。お住まいの地域のルールに従って適切に処分することが大切です。詳しい方法は以下の記事を参考にしてください。
関連記事:中身があるスプレー缶の捨て方|ガス抜き・処分方法を解説
スプレー缶トラブルを防ぐために
スプレー缶が出なくなる原因は、樹脂の固着、ガス抜け、缶の破損、製品不備、経年劣化など様々です。対処法としては、噴射ボタンのお湯洗浄、替えボタンの使用、逆さ吹きなどが効果的です。また、種類によっても最適な対処法が異なるため、製品の特性を理解することが大切です。
スプレー缶を長持ちさせるためには、使用前によく振る、ボタンを最後まで押し切る、使用後に逆さ吹きする、キャップをして立てた状態で保管するなど、正しい使用方法を守りましょう。これらの知識を活かせば、スプレー缶のトラブルを未然に防ぎ、最後まで無駄なく使い切ることができます。