日本のエネルギー自給率は、先進国の中でも特に低い水準にあります。これは、エネルギー資源の多くを海外からの輸入に依存しているためです。
本記事では、最新の日本のエネルギー自給率の状況を紹介し、その低さの主な原因を解説します。また、エネルギー自給率向上に向けた取り組みや、私たち一人ひとりができる取り組みについても紹介します。日本のエネルギー自給率を上げるためのヒントを知り、持続可能な未来に向けて行動しましょう。
【最新】日本のエネルギー自給率
エネルギー自給率とは、一国が必要とする一次エネルギーをどの程度国内で確保できているかを示す指標のことです。この数値は、国内で産出されるエネルギー量を一次エネルギー供給量で割り、100を掛けて算出されます。具体的な計算式は以下の通りです。
エネルギー自給率(%) = 国内産出 / 一次エネルギー供給 × 100
資源エネルギー庁が公表した最新の統計情報によると、2022年度の日本のエネルギー自給率は12.6%でした。この数値は前年度の13.3%から0.7%ポイント低下しており、依然として低水準にとどまっています。
日本のエネルギー自給率の低さは、国際的に見ても顕著です。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で比較すると、日本は2021年度時点で38か国中37位という極めて低い順位に位置しています。この事実は、日本のエネルギー供給構造が海外からの輸入に大きく依存していることを如実に示しています。
このような状況は、日本のエネルギー安全保障上の脆弱性を浮き彫りにしています。国際情勢の変化や自然災害などの予期せぬ事態が発生した際に、安定的なエネルギー供給が脅かされるリスクが常に存在しているのです。
エネルギー自給率の向上は、日本にとって喫緊の課題となっています。再生可能エネルギーの導入拡大や省エネルギー技術の開発、原子力発電の安全性向上と再稼働の検討など、多角的なアプローチが求められています。また、エネルギー源の多様化も、エネルギー安全保障の観点から重要な戦略となるでしょう。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁|令和4年度(2022年度)におけるエネルギー需給実績(確報)
日本のエネルギー自給率が低い原因
日本のエネルギー自給率が低水準にとどまっている主な要因は、石油、天然ガス、石炭といった化石燃料の乏しさです。
国内には小規模な油田が存在しますが、国内需要を満たすには遠く及びません。2022年度時点の天然ガスの国内生産量も全体の約2.2%にすぎず、石炭についても現在はほとんど生産されていません。
この資源不足を補うため、日本は長年にわたり海外からの輸入に頼らざるを得ない状況が続いています。2022年時点で、原油の海外依存度は99.7%、LNG(液化天然ガス)は97.8%、石炭は99.7%と、ほぼ全量を輸入に依存しています。
日本のエネルギー自給率向上の取り組み
日本政府は、エネルギー自給率の向上を重要な課題として認識し、さまざまな施策を展開しています。その中でも特に注目されているのが、再生可能エネルギーの導入拡大です。
政府は、2030年度までに再生可能エネルギーの電源構成比を36〜38%にまで引き上げる野心的な目標を設定しました。この目標は、2022年度の実績である21.7%から大幅な増加を見込んでおり、日本政府がエネルギー自給率の向上を重要な課題として認識していることがわかります。
この目標達成に向けて、太陽光発電や風力発電の導入促進はもちろんのこと、地熱発電や洋上風力発電にも注力しています。日本は世界第3位の地熱資源保有国であり、地熱発電のポテンシャルは非常に高いです。地熱発電は天候に左右されず安定的な発電が可能であり、発電後の熱水をハウス栽培などに活用できる利点もあります。
また、海に囲まれた日本の地理的特性を活かし、洋上風力発電の開発にも力を入れています。洋上風力発電は、陸上に比べて大規模な開発が可能であり、今後の成長が期待されている分野です。ただし、長期間にわたって海域を利用するため、漁業関係者など他の海域利用者との調整やルール作りが必要となります。
さらに、企業や自治体における再生可能エネルギーの導入を促進するため、地域脱炭素移行・再エネ推進交付金の創設など、さまざまな支援策を講じています。これらの取り組みにより、地域レベルでの再生可能エネルギーの普及を後押ししています。
一方で、再生可能エネルギーの導入には技術的な課題やコスト面での問題、設置場所の確保など、克服すべき障壁も存在します。そのため、政府は研究開発への投資や規制緩和、インフラ整備などの施策を並行して進めています。
エネルギー自給率の向上は、単に再生可能エネルギーの導入だけでは達成が難しいのが現状です。そのため、省エネルギー技術の開発や普及、エネルギー利用の効率化といった取り組みも同時に推進されています。
また、原子力発電の安全性向上と再稼働の検討も、エネルギー自給率向上の観点から重要な課題となっています。原子力発電は、燃料となるウランを一度輸入すれば長期間使用でき、再処理によるリサイクルも可能なことから、準国産エネルギーとして位置付けられています。
これらの多角的なアプローチにより、日本は着実にエネルギー自給率の向上を目指しています。しかし、目標達成までの道のりは決して平坦ではありません。技術革新や社会システムの変革、国民の理解と協力が不可欠であり、長期的な視点に立った継続的な取り組みが求められています。
日本のエネルギー自給率を上げるには
日本のエネルギー自給率向上は国家的課題ですが、個人レベルでも貢献できる方法として、以下があります。
- 再生可能エネルギーの選択
- 省エネ行動の心がけ
- エシカル消費の継続
このような、日々の生活の中で実践できる取り組みが、国全体のエネルギー自給率改善につながります。これらの行動を通じて、私たち一人ひとりが日本のエネルギー自立性向上に寄与することができるのです。
省エネ行動の心がけ
省エネ行動は、エネルギー消費量を減らすことで間接的にエネルギー自給率の向上に貢献します。具体的には、照明やテレビのこまめな電源オフ、エアコンの適切な温度設定などが挙げられます。冷房時にはカーテンを閉め、暖房時には扇風機を活用して暖気を循環させるなど、工夫次第で効果的な省エネが可能です。
例えば、エアコンの設定温度を27℃から28℃に上げるだけで、年間で約30kWhの電力使用量削減につながります。節約となるうえに、CO2排出量も減少させます。こうした小さな行動の積み重ねが、国全体のエネルギー消費量削減に寄与するのです。
エシカル消費の継続
エシカル消費とは、環境や社会、人々や地域に配慮した製品やサービスを選んで消費することを指します。具体的には、エコ商品やリサイクル品の購入、資源保護の認証がある商品の選択、再生可能エネルギーを利用している企業のサービス利用などが挙げられます。これらの選択は、環境負荷の少ない製品やサービスの需要を高め、結果としてエネルギー効率の良い製品開発や再生可能エネルギーの普及を促進します。「安いから」「便利だから」という理由だけでなく、その商品やサービスがどのように生産され、どのような影響を与えるかを考慮して選択することが、未来のエネルギー問題解決につながります。
再生可能エネルギーの選択
再生可能エネルギーの選択は、個人レベルでエネルギー自給率向上に直接貢献できる方法です。具体的には、家庭用太陽光発電システムの導入が挙げられます。太陽光発電は、晴れの日はもちろん、曇りの日でも一定量の発電が可能です。
さらに、蓄電池と組み合わせることで、夜間の電力使用や災害時の電力確保にも対応できます。また、電力会社の選択において、再生可能エネルギーの比率が高い事業者を選ぶことも有効です。
2016年4月からの電力自由化により、各家庭で電力会社を選択できるようになりました。再生可能エネルギーを活用した電力を選ぶことで、国全体のエネルギーミックスの改善に貢献できるのです。
三谷バルブは再生可能エネルギー導入を推進
エネルギー自給率の向上は、国家レベルの取り組みだけでなく、企業の積極的な参画も不可欠です。その中で、三谷バルブは再生可能エネルギーの導入を積極的に推進し、持続可能な社会の実現に向けて先進的な取り組みを展開しています。
同社は、製造業としての責任を認識し、エネルギーを消費する立場と製品を生産する立場の両面から、環境への配慮を重視しています。特に注目すべきは、工場への太陽光発電システムの導入です。この取り組みは、エネルギー自給率向上に直接的に寄与するだけでなく、CO2排出量の削減にも大きく貢献しています。
三谷バルブの再生可能エネルギー導入への取り組みは、単なる環境対策にとどまりません。エネルギーの「見える化」を通じて、従業員の環境意識向上にも役立てています。さらに、蓄電池システムの併設により、災害時のレジリエンス強化にも繋がっています。
この先進的な取り組みは、製造業における再生可能エネルギー導入のモデルケースとして、他企業への波及効果も期待されます。三谷バルブの事例は、企業がいかにしてエネルギー自給率向上に貢献できるかを示す好例といえるでしょう。
三谷バルブが取り組む再生可能エネルギー導入の詳細については、以下の記事で紹介されています。この記事では、同社の白河工場における太陽光発電システムの導入プロセスや、その効果について詳しく解説されています。エネルギー自給率向上に関心のある方々にとって、参考になる情報が多く含まれていますので、ぜひご一読ください。
一人一人の行動で変わるエネルギーの未来
日本のエネルギー自給率向上は、国家の安全保障と経済の安定性を確保するために不可欠です。個人レベルでの省エネ行動やエシカル消費の実践、再生可能エネルギーの選択が、国全体のエネルギー構造転換を加速させます。
企業の取り組みも重要で、三谷バルブのような先進的な事例が他社へ波及することで、さらなる効果が期待できます。エネルギー自給率向上に向けた行動を起こすことで、持続可能な社会の実現と、より安定した生活基盤の構築につながります。一人ひとりの意識と行動が、日本のエネルギーの未来を変える力となるのです。