私たちの身の回りには、多種多様な色のプラスチック製品が存在しています。しかし、プラスチックの材料はもともと白色や乳白色、または透明であり、そのままだと色は付いていません。今回は、プラスチック製品に色を付けて価値を高められる加飾技術について解説します。
加飾とは
加飾とは、製品の外観に装飾を加える技法や処理を総称する言葉です。もともとは陶磁器や漆器などの工芸品に対して使われていた言葉ですが、現在では主にプラスチック製品の外観を変える技術を指す言葉として使われています。
軽くて丈夫・加工しやすい・錆びない・腐らない・電気的性質や断熱性に優れる、といった機能を持つプラスチックは、現代のモノづくりには欠かせない材料です。しかし、何も装飾していないプラスチックは、金属や木などのほかの材料に比べると「安っぽい」という印象を受けます。そこで、プラスチック製品の見栄えをよくするために加飾が行われるようになり、さまざまな技術が開発されました。
加飾によって得られるメリット
プラスチック製品への加飾には、製品価値を向上させられるというメリットがあります。同じ機能を持つ製品であっても、加飾された製品の方が高級感やデザイン性が高められており、消費者から選ばれやすくなります。昨今の消費者は製品の機能面だけでなくデザイン性やブランドも重視する傾向にあるため、加飾のニーズはさらに高まっているといえるでしょう。
加飾の種類
加飾には、着色・フロスト・塗装・蒸着・金冠・シルク印刷・ホットスタンプ・レーザー/カッティング・シュリンクなどの種類があります。ここでは、ミタニで対応している代表的な加飾をまとめてご紹介します。
着色
プラスチック材料に着色剤を混ぜて射出成形する方法です。ほかの加飾方法とは異なり、製品の表面だけでなく内部にまで均等に色を付けられます。メーカーが着色した材料(着色ペレット)を使う方法と、高濃度の着色剤(マスターバッチ)をプラスチック材料に混ぜて色を調整しながら成形する方法に大きく分けられます。ミタニでは、小ロット生産の場合やマスターバッチが使用できない場合などに、社内で着色を行うこともあります。
塗装
プラスチック製品の表面に塗料を塗る方法です。液体状の塗料を塗った後に加熱したり、紫外線を照射したりすることで、塗料の膜を形成します。プラスチック製品に色やツヤを付けることでデザイン性を高めるのが主な目的ですが、表面が保護されるというメリットもあります。
蒸着
プラスチック製品の表面に加熱・蒸発させた金属を付着させ、薄膜を形成する方法です。真空状態で金属材料を加熱・蒸発させる「真空蒸着」がよく用いられています。蒸着は金属・プラスチックをはじめ幅広い材料に適用できる方法であり、金属の光沢によって製品に高級感を与えることができます。
金冠
プラスチック製品の上に、薄く加工した金属を被せて接着する方法です。化粧品容器のキャップやディスペンサーポンプなどでよく用いられており、プラスチック製品に金属ならではの高級感を加えられます。金冠では、軽量で加工しやすいアルミニウムがよく使われており、アルマイト加工でさらに着色することもあります。
ホットスタンプ
金属などを加工して作られたホットスタンプ箔を熱と圧力で押し付けて、プラスチック製品に転写する方法です。平面に転写するのが一般的ですが、曲面の一部にも実施されることがあります。ホットスタンプは塗装のように乾燥させる必要がないため、比較的短い時間で加工できます。また、簡単な文字や絵柄も1工程で転写できる点もメリットです。
シボ加工
射出成形用の金型に細かい凹凸模様をつけ、製品に転写させる方法です。ミタニでは主に、小さな粒や粉状のメディア(研磨剤)を噴射するブラスト加工で金型を加工しています。シボ加工を行うとプラスチック製品の表面に凹凸模様が付与され、高級感が高まる、キズが目立ちにくくなる、滑り防止になる、といった効果が得られます。
シボ金型で成形されたキャップ
通常の金型での成形品は表面にツヤがあるのに対し、シボ金型での成形品は艶や光沢のないマット調の見た目に仕上がります。さらりとした質感は上品で落ち着いた印象や高級感を演出します。
ミタニはさまざまな加飾に対応可能!
私たちが作っているエアゾールバルブやディスペンサーポンプには、数多くのプラスチック部品が使われています。それらのデザイン性や機能性を高め、魅力的な製品を作るために、さまざまな加飾技術を活用しています。
加飾技術にはそれぞれ特徴があり、製品に合わせた最適な方法を選択しなければなりません。今回は代表的な加飾技術をご紹介しましたが、それ以外にも加飾には蒸着転写箔や蒸着シュリンクフィルム、着色のシュリンクフィルムなど様々な種類があります。
ミタニではご要望に合わせた加飾のご対応を行っております。製品の価値をより高めたい場合は、お気軽にご相談ください。